■ 名詞の性質
名詞は、人や物事の名前を表す単語である。体言ともいう。
名詞は、自立語で、活用がない。
■ 名詞の働き
名詞は、文中で次のような働きをする。
① 主語になる……「が・は・も」などの助詞をともなう。
(例) 鳥が 飛ぶ。
② 述語になる……付属語(助動詞・助詞)をともなう。
(例) これは、本だ 。
③ 修飾語になる……ふつう助詞をともなう。
(例) 梅の 花が 咲く。 駅まで 行く 。
④ 独立語になる……単独または助詞をともなう。
(例) 合格、それが目標です。 雲よ 、どこへ行く。
⑤ 接続語になる……助動詞や接続助詞をともなう。
(例) 雨なので 、中止になった。
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品詞の一つである名詞について学んでいきましょう。(品詞については、「単語の分類(3)品詞の分類」のページを参照してください。)
まずは、名詞の性質と働きを見ていきます。
次の例を見てください。
学校 に 電車 で通っています。
わたし の 母親 は、あなた と同じ 趣味 です。
『 源氏物語 』は、紫式部 が書いた 物語 だ。
「学校」「電車」「趣味」「物語」という単語は物や事柄の名前を表していて、「わたし」「母親」「あなた」という単語は人の呼び方を表しています。
また、「源氏物語」や「紫式部」という単語は、もっと具体的に一つしかない物や人の名前を表しています。
このように、単語のなかには人や物事の名前を表すものがあります。このような単語を名詞といいます。
名詞は、体言ともいいます。体言という語は、動詞・形容詞・形容動詞の三つの品詞を用言と呼ぶのに対応する文法用語です。
*
名詞は、自立語で、活用がない単語です。
自立語は、単独で文節をつくることができて、つねに文節の最初に来る単語です。
名詞も、この自立語の一つですから、つねに文節の最初に来ます。
もっとも、名詞が単独で用いられることは少なく、ふつうは名詞のあとに付属語が付く形で文節がつくられます。
(自立語と付属語については、「単語の分類(1)自立語と付属語」のページを参照してください。)
また、名詞は、活用がない単語ですから、⽂中での⽤法(⽂がそこで切れるか続くか、どんな語がそのあとに続くか)によってその形が変化することはありません。
(単語の活用については、「単語の分類(2)単語の活用」のページを参照してください。)
次の例文の赤字部分のように、名詞が単独で文節をつくる場合もあります。
【ア】きのう 激しい雨が降った。
【イ】富田くん 、きのうは雨が激しかったね。
アの文の「きのう」は、「降った」にかかる修飾語です。また、イの文の「富田くん」は、独立語です。いずれも、名詞一つからなる文節です。
なお、作品のタイトルや新聞記事の見出し、会話などでは、名詞が単独で主語として用いられることもあります。
・父 帰る(作品のタイトル)
・翔太くん 、帰ったかな。(会話文)
名詞は、文中でさまざまな働きをします。
名詞の働きを一つずつ、例文を見ながら確かめていきましょう。
(1) 主語になる
鳥 が 飛ぶ。
空 は 広い。
海 も 広い。
上の例文の「鳥が」「空は」「海も」は、それぞれ「鳥」「空」「海」という名詞に助詞の「が」「は」「も」が付いた文節です。
いずれの文節も、それぞれの文中で「なにが」にあたる文節、すなわち主語になっています。
このように、名詞には、「が」「は」「も」などの助詞をともなって主語の文節をつくるという働きがあります。これが名詞の基本的な働きです。
(主語については、「文節の働き(1)主語と述語」のページを参照してください。)
(2) 述語になる
これは、本 だ 。
明日は、雨 です か 。
最初の例文の「本だ」は、「本」という名詞に「だ」という付属語(助動詞)が付いた文節です。
また、次の例文の「雨ですか」は、「雨」という名詞に「です」(助動詞)と「か」(助詞)という二つの付属語が付いた文節です。
どちらの文節も、それぞれの文中で、「なにが―なんだ」の「なんだ」にあたる文節、すなわち述語になっています。
このように、名詞には、「だ」「です」「か」などの付属語(助動詞・助詞)をともなって述語の文節をつくるという働きがあります。
(述語については、「文節の働き(1)主語と述語」のページを参照してください。)
(3) 修飾語になる
梅 の 花が 咲く。
駅 まで 自転車 で 行く。
最初の例文の「梅の」は、「梅」という名詞に助詞の「の」が付いた文節であって、「花が」という名詞(体言)の文節を修飾しています。
また、次の例文の「駅まで」「自転車で」は、それぞれ「駅」「自転車」という名詞に助詞の「まで」「で」が付いた文節です。どちらの文節も、「行く」という動詞(用言)の文節を修飾しています。
このように、名詞には、「の」「まで」「に」などの助詞をともなって修飾語の文節をつくるという働きがあります。
(修飾語については、「文節の働き(2)修飾語」のページを参照してください。)
上の例文のように、名詞が体言の文節を修飾するとき、すなわち連体修飾語になるときは、助詞の「の」をともないます。
また、名詞が用言の文節を修飾するとき、すなわち連用修飾語になるときも、さまざまな助詞(「を・に・へ・まで」など)をともなうのがふつうです。
ただし、時を表す名詞や数詞の場合は、助詞をともなわずに単独で連用修飾語になることができます。次の例文で確認してください。
・きのう 僕は、うどんを 3杯 食べた。
(数詞については、「名詞(2)種類」のページを参照してください。)
(4) 独立語になる
合格 、それが私の目標です。
雲 よ 、おまえはどこへ行く。
最初の例文の「合格」は、その名詞1語からなる文節であって、提示の独立語になっています。
また、次の例文の「雲よ」は、名詞の「雲」に助詞の「よ」が付いた文節であって、呼びかけの独立語になっています。
このように、名詞には、単独で、または、助詞をともなって独立語の文節をつくるという働きがあります。
例文のように、名詞からなる独立語は、提示や呼びかけを表します。
(独立語については、「文節の働き(3)接続語・独立語」のページを参照してください。)
(5) 接続語になる
雨 な ので 、試合が中止になった。
上の例文の「雨なので」は、名詞の「雨」に、助動詞の「だ」(の連体形)と接続助詞の「ので」が付いた文節です。
「雨なので」の文節は、あとの「中止になった」の文節とつながってその理由を表しています。つまり、接続語です。
このように、名詞には、助動詞や接続助詞をともなって接続語の文節をつくるという働きもあります。
(接続語については、「文節の働き(3)接続語・独立語」のページを参照してください。)
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次の各文の中に名詞がいくつあるかをそれぞれ数字で答えなさい。
(1) 夏休みに夏目漱石の小説を読んだ。
(2) あなたの得意な科目を教えてください。
(3) 一つのクラスに男子が20人います。
(4) 今年、妹が小学校に入学します。
【考え方】
ある単語が名詞であるかどうかを見分けることは、案外簡単ではありません。名詞ではないけれども、文中にあると名詞と間違いやすい単語があります。
(1)の文の名詞は、「夏休み」「夏目漱石」「小説」の三つ。「夏目漱石」は人の名前ですが、これで一つの名詞(固有名詞)です。
(2)の文の名詞は、「あなた」「科目」の二つ。「得意(な)」は、「得意だ」という形容動詞の一部です。
(3)の文の名詞は、「一つ」「クラス」「男子」「20人」の四つ。「一つ」「20人」は、ものの数を表す名詞(数詞)です
(4)の文の名詞は、「今年」「妹」「小学校」の三つ。「今年」は、時を表す名詞で、単独で連用修飾語になっています。
「入学(し)」も、一見して名詞のようですが、この場合は動詞の一部です。「入学」と「する」が結びついてできた複合語のサ変動詞です。
【答】
(1) 3
(2) 2
(3) 4
(4) 3
*
次の各文中の下線を引いた文節の働きを後から選び、記号で答えなさい。
(1) 公園の池のほとりに咲く桜がきれいだ。
(2) この問題は、何度挑戦しても解けない。
(3) 4月なのに、まだ肌寒い。
(4) 田中くん、君がこれを作ったのか。
ア 主語
イ 述語
ウ 修飾語
エ 独立語
オ 接続語
【考え方】
名詞には、主語・述語・修飾語・独立語・接続語の五つの働きがあります。
文中の名詞がどの働きをしているかを、文節の形や文節どうしの関係から判断しましょう。
(1)の文の「桜が」は、名詞「桜」に助詞「が」が付いて主語になっている文節です。「桜が」に対応する述語は、「きれいだ」です。
(2)の文の「何度」は、数量を表す名詞であって、一語で文節になっています。問題文中では、「挑戦しても」という用言の文節を修飾する文節(連用修飾語)になっています。
このように、時間や数量を表す名詞は、単独で連用修飾語になることができます。
(3)の文の「4月なのに」は、名詞「4月」に助動詞「だ」の連体形と接続助詞「のに」が付いた文節です。あとの文節とつながる接続語になっています。
(4)の文の「田中くん」は、単独で文節になっています。主語とまぎらわしいですが、呼びかけの独立語です。
「田中くん」の直後に読点(、)が打たれていることや、文全体の意味から判断しましょう。(主語は、「君が」です。)
【答】
(1) ア
(2) ウ
(3) オ
(4) エ