ホーム > 用言 > 動詞(9)可能動詞

動詞(9) ― 可能動詞

可能動詞とはどういった動詞であるのかを学びます。可能動詞の成り立ちを知ることで、可能動詞の性質をよく理解することができるようになります。また、可能動詞は五段活用の動詞だけからつくられますが、それを五段活用以外の動詞についてまねたのが、いわゆる「ら抜きことば」です。

▼ 可能動詞とは

次の例を見てください。

● 本を 読む 。  本を 読める 。

● 空を 飛ぶ 。  空を 飛べる 。

● 英語を 話す 。  英語を 話せる 。

青字の語も赤字の語も、どちらも動詞です。両者を意味をくらべてみると、「読む」「飛ぶ」「話す」に対して、「読める」「飛べる」「話せる」には「~することができる」という意味が含まれています。

「読める」「飛べる」「話せる」のように、「~することができる」(可能)という意味をあらわす動詞を可能動詞かのうどうしと言います

ところで、「~することができる」という意味をあらわす方法としては、可能動詞を用いることのほかに、可能の助動詞「れる」を用いる方法もかんがえられます。

「読む」「飛ぶ」「話す」は、すべて五段活用の動詞です。これらの動詞の未然形に助動詞「れる」をつけると、「読まれる」「飛ばれる」「話される」となります。

文法的にはまちがいではありませんが、実際にこのような表現を可能の意味で用いることはほとんどありません。代わりに、「読める」「飛べる」「話せる」といった可能動詞を用いるのがふつうです。

実は、「読める」などの可能動詞は、「読まれる」といったかたちが変化したものであるとかんがえられています。

すなわち、可能動詞とは、「読む」などの五段活用の動詞の未然形に可能の助動詞「れる」がついた形(「読まれる」)が一つの単語(「読める」)に転じたものです。このことを図でしめすと、次のようになります。

可能動詞の成り立ち
【図】可能動詞

**

このように、可能動詞は五段活用の動詞をもとにしてつくられる動詞です。したがって、次の表のように、一つひとつの可能動詞にはそれに対応する五段活用の動詞があります

【表】可能動詞と五段動詞の対応

可能動詞 五段動詞
書ける 書く
飛べる 飛ぶ
言える 言う
なれる なる
作れる 作る

可能動詞は、五段活用以外の活用をする動詞からはつくることができません。五段活用以外の動詞で可能の意味を表現するためには、助動詞「られる」をつけるなどの方法によることになります。

「見える」という動詞があります。これは、一見して可能動詞であるように思うかもしれません。しかし、「見る」は上一段活用の動詞であって、「見える」は可能動詞ではありません。「見れる」という言い方もしたりしますが、これは「ら抜きことば」と呼ばれる表現です。「ら抜きことば」については、後に述べます。

**

可能動詞は、どのような活用をするのでしょうか。「読める」を例にしてその活用のしかたを見てみましょう。

読  ない  (未然形)

読  ます  (連用形)

読 める 。  (終止形)

読 める とき (連体形)

読 めれ ば  (仮定形)

「読める」は、その活用語尾から、下一段活用の動詞であることがわかります。ただし、一般の下一段活用の動詞とちがって命令形がありません。「読める」以外の可能動詞についても同じです。

このように、可能動詞は下一段活用ですが、命令形がありません。これは、可能の助動詞「れる」と同じような活用のしかたです。

可能動詞は五段活用の動詞の未然形に可能の助動詞「れる」がついた形が変化したものであると説明しました。そのために、可能動詞と可能の助動詞「れる」とは、活用のしかたが同じになります。

★ まとめ ★

【可能動詞】

○ 可能動詞は、「~できる」(可能)の意味をあらわす動詞である。

○ 可能動詞には、対応する五段活用の動詞がある。

○ 可能動詞は下一段活用をするが、命令形がない

▼ ら抜きことば

次の例文を見てください。

● この服は丈夫なので、長く 着れる 。

● ケーキならいくらでも 食べれる 。

例文のように、日常では、「着れる」「食べれる」などという言い方をすることがよくあります。これらのことばは、一見して可能動詞とよく似ています。

しかし、前に説明したように、可能動詞は五段活用の動詞からつくられるものです。「着る」「食べる」はそれぞれ上一段活用・下一段活用の動詞ですから、これらの動詞からは可能動詞をつくることができません。したがって、「着れる」「食べれる」ということばは可能動詞ではありません

上一段活用または下一段活用の動詞に可能の助動詞がつくときは、「れる」ではなく「られる」がつきます(「れる」は五段活用の動詞に接続しますが、上一段活用・下一段活用の動詞には接続しません。)。「着る」「食べる」であれば、「着られる」「食べられる」となるのが文法的に正しいかたちです。

これに対して、「着れる」「食べれる」という言い方は、本来「られる」がつくべきである動詞に「れる」がついているので、文法的には間違った言い方であると言えます。このような言い方は、「ら抜きことば」と呼ばれています。

ら抜きことば「着れる」
【図】ら抜きことば

日常使用されている「ら抜きことば」としては、「着れる」「食べれる」のほかに、「見れる」「起きれる」「出れる」「寝れる」「乗せれる」「来れる」などがあります。

いわゆる「ら抜き言葉」は、「ことばの乱れ」あるいは「ゆれ」として取り上げられる代表的のものの一つです。五段活用の動詞から可能動詞をつくるという現象は明治以降に広まったものですが、これを五段活用以外の動詞にまで類推したものが「ら抜き言葉」であると言われています。「ら抜き言葉」は、国語教育の現場ではいまだに、文法的に正しい表現であると認められるには至っていません。

しかし一方で、これを擁護・推進する意見もあります。その理由のなかで有力であるのが、「ら抜き言葉」のもつ合理性の指摘です。たとえば、次の二つの文章を比べてみましょう。

【A】 社長は、会議に 来られ なかった。

【B】 社長は、会議に 来れ なかった。

助動詞「られる」は、可能のほかに、受け身・尊敬・自発という意味をもつ多義的な語です。ですから、その意味を文脈から推測することができないかぎり、文の意味を確定することができません。

Aの文を見ると、「来られなかった」という文節が、「来ることができなかった」という意味であるのか、それとも、社長に対する敬意を表した意味であるのかが問題となります。しかし、Aの文だけからは、どちらであるかがはっきりしません。このことは、読み手にとっての負担となります。

それに対して、Bの文の「来れなかった」の意味は、「来ることができなかった」であることがはっきりしています。なぜなら、「ら抜き言葉」は可能の意味でしか使用されないからです。

このように、「ら抜き言葉」には、助動詞「られる」のもつさまざまな意味を整理する働きがあることが指摘されています。

「ら抜きことば」のついでに、もう一つ誤ったことばづかいを紹介します。

「読む」を可能動詞にすると「読める」となります。「読める」だけで可能の意味をあらわしていますから、さらにこれに可能の助動詞をつける必要はありません。

しかし、実際には次の例文のように、「読めれる」という言い方をすることが日常で見受けられます。これは、可能動詞に可能の助動詞をつけるだけでなく、さらに下一段活用の動詞に「られる」ではなく「れる」をつれるという二重のまちがいをおかしている表現です。

● 字が小さすぎて 読めれ ない。

このような言い方を、「れ」を余計につけ足していることから、「れ足すことば」ということがありますが、もちろん文法的には間違った表現です。

▼ 練習問題で理解度チェック

【問題1】

次のことばのなかから可能動詞を選んで、番号で答えなさい。

① 見える  ② 来れる  ③ 取れる  ④ 乗せれる

⑤ 聞こえる ⑥ 壊れる  ⑦ なれる  ⑧ 登られる

【正解】

③、⑦

【解説】

可能動詞を見分けるためには、その性質をよく理解しておきましょう。

可能動詞には、次のような性質があります。

(1) 可能(~できる)の意味をあらわす。

(2) 対応する五段活用の動詞がある。

(3) 下一段活用の動詞である。

可能動詞であるといえるためには、これらの性質をすべて満たさなければいけません。以下、問題の各語について順に検討していきましょう。

① 「見える」は下一段活用の動詞ですが、これに対応する「見る」は五段活用の動詞ではありません。したがって、「見える」は可能動詞ではありません。ちなみに、「見れる」は、ら抜きことばです。

② 「来れる」に対応する「来る」はカ行変格活用の動詞ですから、可能動詞をつくることができません。また、可能の助動詞がつくときは、「れる」ではなく「られる」がつきます。したがって、「来れる」ではなく「来られる」が本来の正しい形です。

③ 「取れる」は、「取ることができる」という意味をあらわす下一段活用の動詞です。「取る」という五段活用の動詞がこれに対応します。したがって、「取れる」は、可能動詞です。

④ 「乗せれる」という言い方に対応する動詞は、五段活用の「乗る」ではなくて下一段活用の「乗せる」です。そして、「乗せる」は下一段活用の動詞ですから、本来であれば、「れる」ではなくて「られる」がこなければいけません。「乗せれる」は、ら抜きことばです。

⑤ 「聞こえる」は、下一段活用の動詞です。そして、「聞く」が五段活用の動詞です。そうすると、「聞こえる」は可能動詞であるように思えます。しかし、「聞こえる」は、可能の意味をあらわすとはかぎりません。「笛の音が聞こえてきた。」のように、おもに「自然とそうなる」(自発)という意味をあらわす動詞です。したがって、「聞こえる」は、可能動詞ではありません。ちなみに、「聞く」に対する可能動詞は、「聞ける」です。

⑥ 「壊れる」は下一段活用の動詞であり、「壊す」という五段活用の動詞もあります。しかし、可能の意味をあらわす動詞ではないので、可能動詞とはいえません。

⑦ 「なれる」は、「なることができる」という意味をあらわす下一段活用の動詞です。「なる」という五段活用の動詞がこれに対応しています。したがって、「なれる」は、可能動詞です。

⑧ 「登られる」は、五段活用動詞「登る」の未然形「登ら」に「れる」がついた形です。文法的には正しいのですが、日常生活において可能の意味で使用されることはあまりない表現です。可能動詞の「登れる」を使うのがふつうです。

【問題2】

次の文章中のかっこ内にあてはまることばを、後から選んでそれぞれ番号で答えなさい。

「『( Ⅰ )』という可能動詞は、『( Ⅱ )』という( Ⅲ )活用の動詞が可能の意味を表す( Ⅳ )活用の動詞に変化したものである。これに対して、『( Ⅴ )』という言い方が多く聞かれるが、『( Ⅵ )』という動詞は( Ⅶ )活用であるから、本来であるならば可能動詞をつくることはないはずである。このような新しい可能の表現のしかたは、( Ⅲ )活用の動詞が可能動詞をつくる現象が、( Ⅲ )活用以外の活用をする動詞にも類推されて発生したものであると考えられる。」

① 上一段  ② カ行変格  ③ 五段  ④ 下一段  ⑤ 読める

⑥ 読む  ⑦ 見える  ⑧ 見る  ⑨ 見れる

【正解】

Ⅰ ⑤  Ⅱ ⑥  Ⅲ ③  Ⅳ ④  Ⅴ ⑨  Ⅵ ⑧  Ⅶ ①

【解説】

本文で説明した内容を要約した問題です。

可能動詞は、五段活用の動詞が可能の意味をあらわす下一段活用の動詞に変化したものです。「読む」に対する「読める」が可能動詞の例です。

本来であれば、五段活用以外の動詞からは可能動詞をつくることはできません。しかし、「見る」は上一段活用の動詞であるにもかかわらず、「見れる」という言い方をすることがあります。これは、五段活用の動詞が可能動詞をつくる現象が五段活用以外の動詞にも類推されたものです。

▼ コメント

 このページの内容に関して、ご質問やご指摘などを書き込むことができます。また、掲示板のほうにも、本サイトへの皆様のご意見・ご要望をぜひお寄せください。

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    なお (日曜日, 21 5月 2017 20:41)

    海外で日本語を教えていますが、いつも文法を確認するのに使わせてもらっています。
    説明が簡潔で、わかりやすいです。
    ありがとうございます。

サイト内検索