要点まとめ
■ 「で」という語には、次のようなものがある。
① 形容動詞の活用語尾
「で」を「な」に置きかえると、直後に体言が続くかたちになる。
〔風が さわやかで ある。→ さわやかな 風〕
② 助動詞「だ」の連用形
「で」を「な」に置きかえることができない。体言につく。
〔さわやかな 風で ある。→ 風な ✖〕
③ 助動詞「そうだ」「ようだ」の連用形の一部
「そうで」「ようで」の形になっている。
〔雪が 降りそうで ある。〕
〔まるで 雪のようで ある。〕
④ 格助詞「で」
場所・材料・手段・理由・時間などをあらわす。
〔海で 泳ぐ。〕
⑤ 接続助詞「て」の濁音化
動詞の音便形(「―い」「―ん」)につく。
〔海で 泳いで いる。〕
〔砂浜で 遊んで いる。〕
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「で」という語の識別のしかた(見分け方)について解説します。
次の例文を見てください。
【A】風が さわやかで ある。
【B】さわやかな 風で ある。
【C】雪が 降りそうで ある。
【D】海で 泳ぐ。
【E】海で 泳いで いる。
各例文の下線部は、いずれも「で」という語を含んでいます。ただし、文法上の性質・種類はそれぞれちがっています。
(1) 形容動詞の活用語尾
例文Aの「で」は、形容動詞の(連用形の)活用語尾です。
例文Aの「さわやかで」は、「さわやかな風」というように、「で」を「な」に置きかえて直後に体言を連ねることができます。
このように、「で」を「な」に置きかえると、直後に体言が続くかたちになるのが形容動詞の特徴です。
さらに、「とてもさわやかな風」というように、直前に「とても」という副詞を補うことができます。これも、形容動詞の特徴の一つです。
テクニック★形容動詞の識別
① 言い切りの形が「だ」で終わる。
② 「―な」(連体形)に活用させて体言を連ねることができる。
③ 直前に「とても」を補うことができる。
(2) 助動詞「だ」の連用形
例文Bの「で」は、断定の助動詞「だ」の連用形です。
例文Bの「風だ」は、「風な天気」というように言いかえることができません。助動詞「だ」には、そのような用法がないからです。
たしかに助動詞「だ」にも連体形「な」がありますが、「風なのだ」「風なのに」「風なので」のように、助詞「の・のに・ので」に連なる用法しかありません。
また、直前に「とても」を補うと、「とても風だ」のように不自然な表現になります。
助動詞「だ」は、主に体言につくという性質があるので、それによって見分けることができます。
テクニック★助動詞「だ」と形容動詞の違い
① 連用形の「に」がない。
② 連体形「な」につくのは、助詞「の・のに・ので」だけである。
ただし、格助詞「で」との見分けは別に考えなければいけません。
(3) 助動詞「そうだ」「ようだ」の連用形の一部
例文Cの「で」は、助動詞「そうだ」の連用形(「そうで」)の一部です。
「そうだ」と同じように、連用形が「で」で終わる助動詞に「ようだ」があります。
「そうで」「ようで」は、その語の形によって助動詞であると判断することができます。
(4) 格助詞「で」
例文Dの「で」は、格助詞です。
格助詞の「で」は主に体言につきますが、例文Bのように、助動詞「だ」も体言につきます。
したがって、語句のかたちからは、格助詞と助動詞のいずれであるかを見分けることができません。
格助詞「で」と助動詞「だ」とは、それを含む文節の意味・働きによって見分けることができます。
「で」を含む文節が、場所・材料・手段・理由・時間などをあらわす連用修飾語であるときは、「で」は格助詞です。断定をあらわす述語であるときは、助動詞です。
(5) 接続助詞「て」の濁音化
例文Eの「で」は、接続助詞「て」の音が濁ったものです。
接続助詞「て」は活用語(用言・助動詞)の連用形につきますが、とくに五段活用の動詞につくときには音便が生じます。
さらに、ある種の五段活用動詞(ガ行・ナ行・バ行・マ行五段活用)の音便形につくときには、「て」が濁音化して「で」になります。
たとえば、「泳ぐ」という動詞(ガ行五段活用)に「て」がつくと「泳いで」になり、また、「遊ぶ」という動詞(バ行五段活用)に「て」がつくと「遊んで」になります。
このように、動詞の音便形(「―い」「―ん」)につく「で」は、接続助詞「て」が濁音化したものです。
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次の各文の下線部の説明としてあてはまるものを、後のアからエのなかから選んで、記号で答えなさい。
(1) わがはいは、猫である。
(2) 森の中は、静かで心なごむ。
(3) 雨が止んで、日が差し始めた。
(4) 大事なことは、文書で報告する。
ア.形容動詞の連用形活用語尾
イ.助動詞「だ」の連用形 ウ.格助詞「で」
エ.接続助詞「て」の濁音化
【考え方】
「で」を識別するときには、次の2点に着目します。
まず、「で」を含む文節を「―な」+体言のかたちに変えることができるかどうかを考えます。
変えることができるのであれば形容動詞の連用形の活用語尾、変えることができないのであれば形容動詞以外の品詞(の一部)です。
設問の四つの文のうち、「―な」+体言のかたちに変えることができるのは、(2)だけです。「静かな森」と言うことはできますが、「猫な動物」などと言うことはできません。
ちなみに、設問文にはありませんが、助動詞「そうだ」「ようだ」の連用形「そうで」「ようで」も「―な」+体言のかたちにすることができます。たとえば、「元気そうである」→「元気そうな人」というように。
助動詞「そうだ」「ようだ」は形容動詞と同じ活用をするので、形容動詞とまぎらわしい語です。「そうで」「ようで」の形は助動詞であると覚えてしまいましょう。
*
次に、「で」の直前の部分に注目します。
「で」の直前が体言であれば、助動詞「だ」(断定)の連用形、または、格助詞です。動詞の音便形(「―い」「―ん」)であれば、接続助詞「て」の濁音化したものです。
助動詞か格助詞かは、「で」を含む文節の意味・働きによって見分けます。
断定をあらわす述語であれば助動詞であり、場所・材料・手段・理由・時間などをあらわす連用修飾語であれば格助詞です。
(1)の「で」は、直前が「猫」という体言であり、かつ、「猫で(ある)」は述語ですから、助動詞「だ」の連用形です。
(4)の「で」は、直前が「文書」という体言であり、かつ、手段をあらわす連用修飾語ですから、格助詞です。
(3)の「で」は、直前が動詞「止む」の音便形(撥音便)「止ん」ですから、接続助詞です。
【答】
(1) イ
(2) ア
(3) エ
(4) ウ